先日テレビで最低賃金特集があり、そこで取り上げられた33歳で手取り23万円の、自動販売機の販売や設置を行う会社の社員が話題になりました。
手取り23万円の支出の内訳が示されて、手取り23万円だと毎日おにぎり2個しか食べられないといったことが話されていたようです。
ネットでは、手取り23万円の男性に対して、
など、男性やテレビ側にまで批判が相次ぎました。
そこで、この記事では、ネットでの批判は脇に置いておいて、33歳で手取り23万円の人が豊かになるためにはどうべきか考えてみます。
収入が最低賃金に近い状況でも豊かになるにはどうしたら良いのか参考にしていただければと思います。
今からやるべきことをまとめておきましたので、この通りに行動してみてください。
- 病院で診察を受け、精神的な病気の疑いがあれば診断書をもらう
- 携帯を格安SIMに変える
- 保険と年金を解約する
- 会社を辞める
- 傷病手当金を受給する
- 貯金を始める
- 次の仕事の準備をする
- 半年分の生活費が貯まったら投資を始める
それでは、詳しく解説していきます。
テレビで紹介されていた内容
テレビで紹介されていた33歳で手取り23万円の男性の状況は、まとめると以下の通りです。
- 年齢33歳、男性
- 自動販売機の販売・設置をおこなう会社の正社員
- 仕事は自動販売機の商品の補充や詰替え
- 平均月間労働時間300時間(残業時間含む)
- 手取り月収23万円
- 時給換算すると最低賃金ちょうどかそれを少し下回る
- 食事は平日朝1食、コンビニのおにぎり2個のみ
- 洗濯機が壊れたが、買えないのでコインランドリーで洗濯
手取り23万円の支出内訳はこちらのグラフの通りです。

問題点
見る人の立場や観点によって切り口は様々なので、出てくる問題点も異なりますが、僕が思う問題点はこんな感じです。
- 携帯通信費に20,000円
- 保険・年金に33,000円
- 残り46,000円
- 300時間働いて時給換算だと最低賃金を下回る
それぞれ問題だと思うところを解説します。
携帯通信費に20,000円
後ほど解説しますが、月間労働時間300時間というのは、仕事以外のことをやる余裕がほとんどありません。
そんな状態で携帯通信費に20,000円というのは、どう考えても使いすぎです。
20,000円にモバイルルーターや自宅のインターネット回線の費用が含まれているとしても、5,000円程度なので、携帯代だけで15,000円以上かかっているのではないかと思います。
10,000円を超えるということは、キャリア契約であることが予想できます。
携帯代は格安SIMに変更することで、すぐに固定費を削減することができるので、まず一番に手を入れるべきところと言えるでしょう。

保険・年金に33,000円
保険と年金に33,000円というのも使いすぎです。
保険は、自動車保険や火災保険に加入していることも考えられますが、毎月の出費に換算すると大きくは無いので、金額のほとんどが生命保険や医療保険と想定します。
年金は、手取り23万円から支払っているので、源泉徴収となる厚生年金ではない個人年金であることが分かります。
独身にとって生命保険や医療保険、個人年金は不要です。
生命保険は、万が一のことがあった場合に、遺される人のために備えておくものです。独身であれば、亡くなったとしても金銭的に困る人はいないでしょう。
医療保険は、高額療養費制度があるので、どんなに医療費がかかったとしても月に10万円以上は掛かりません。
医療保険に入るくらいなら、貯金で備えれば十分です。
個人年金も不要です。会社員であれば厚生年金という手厚い年金保険があるので、それ以上に備えるのであれば、保険ではなく投資で準備する方が効率的です。
そのため、保険・年金の33,000円はほとんど全て不要な出費と言えます。

残り46,000円
支出内訳において「その他の支出」ではなく「残り」というのは、支出しなかった金額と読み換えることができそうです。
通常、日用品などの消耗品費も発生するかと思いますが、家賃・光熱費の中に含まれている可能性があります。
これだけ多くの時間を仕事にあてているのであれば、買い物をする暇すら無いのかもしれません。
そして手元に残るのであれば、明確に貯金なり投資をするべきです。
300時間働いて時給換算だと最低賃金を下回る
ここが最も大きな問題ですが、300時間働いて手取り23万ということにそもそも疑問を抱くべきです。
「疑問を抱く余裕すらなく精神的に追い込まれている」といった意見もありますが、それを言ってしまうと、この手取り23万円の男性は何も変わることがないので、別の議論として脇に置いておきます。
精神的に追い込まれている人が、この記事に出会ってくれることを祈ります。
300時間労働ということは、標準勤務時間が1日8時間(9-18時)×20営業日だとすると、140時間も残業していることになります。
週5日勤務だと、毎日9時から夜中の1時まで働いていることになります。
土曜日も含めた週6日勤務で考えると、毎日9時から22時半まで働くことになります。(平日は4.5時間残業、土曜日は12.5時間残業)
また、手取り23万円ということは、額面で28〜30万円ということになります。
この額面給与で300時間の労働をしているので、時給換算すると933〜1,000円です。
都内勤務なので、最低賃金すら下回っています。

正社員なので福利厚生や社会保険があるものの、アルバイトしていた方がマシとも取れるような状況です。
そんな状況にも関わらず、過酷な環境で働き続けると言うことは、長時間労働によって判断能力を奪われてしまっているなど、何らかの精神的な疾患がある恐れがあります。
もはや金銭うんぬんの話ではありません。
改善策
働けど働けど状況が改善しない負のスパイラルは、どのように改善していくべきなのでしょうか。
ポイントは4つです。
- とにかく仕事から離れる
- 固定費を削減する
- 貯金と投資を始める
- 次の仕事の準備をする
順番に説明していきます。
とにかく仕事から離れる
まず一番に考えることは、300時間労働から一刻も早く離れることです。
300時間も働いていたら、仕事以外のことが何も考えられなくなります。
正常な判断ができない場合は、精神的な病気という可能性もあるので、一度病院で診断してもらうべきでしょう。
病気の診断が下れば、健康保険の傷病手当金を受給することができます。
傷病手当金は、病気や怪我で働けなくなった人の生活を保障する制度で、額面給与の65%程度の金額を最大18ヶ月間受給できます。
健康保険として、毎月保険料を支払っているので、いざという時にはしっかりと傷病手当金を受給して生活の立て直しを図るべきです。
また、傷病手当金が受給できなかったとしても、退職して再度働く意思ありという状態であれば、雇用保険の失業給付金が受給できます。
失業給付金は、再就職するまでの支援金という形で、額面給与の60%程度の金額を最大10ヶ月間受給できます。
額面給与を28-30万円と仮定した場合、傷病給付金や失業給付金として16.8〜19.5万円くらい受給できます。
毎月300時間働いて手取り23万円の生活を継続するのと、生活を立て直すために一度会社を辞めて毎月17〜18万円程度もらえるのと、どちらが良いかは明らかだと思います。
傷病手当金を受給するには、退職前の医師からの診断書が必要です。
傷病手当金のためもありますが、月間300時間も労働している場合、何らかの精神的ダメージを受けている恐れがありますので、何よりも優先して医師の診断を受けるようにしてください。
固定費を削減する
また、手取りの収入が減ることもあり、固定費をしっかりと見直すべきです。
ポイントとなるのは、やはり携帯通信費と保険・年金です。
携帯通信費は、格安SIMに変更することで毎月2,000円程度まで抑えることができるでしょう。
また、保険・年金は全て解約しましょう。33歳独身男性であれば、保険や年金を国の制度以上に手厚く準備する必要はありません。
結果的に、合計で毎月51,000円節約できることになります。
こうすることで、毎月の必要な支出が133,000円まで抑えることができました。
費目 | 支出額 |
家賃・光熱費 | 61,000円 |
食費 | 40,000円 |
携帯通信費 | 20,000円→2,000円 |
保険・年金 | 33,000円→0円 |
交際費 | 30,000円 |
合計 | 133,000円 |
なお、家賃や食費、交際費については、必要なものであったり、生活に潤いを与えるものであるため、あえて削りません。
毎日おにぎり2個という報道もありますが、1ヶ月で40,000円食費として出費しています。
食費40,000円の生活水準が出来上がってしまっているので、これを節約すると我慢が発生してしまうので、今回は節約は無しとします。
1日に1,000円以上使える状態なので、仕事を辞めてうまく自炊すれば貧困とはかけ離れた食生活になるでしょう。
貯金と投資を始める
会社を辞めて傷病手当金を17万円程度受給して、生活費として13.3万円支出する生活であれば、毎月3.7万円ほどの余裕ができます。
次に考えるべきは、この3.7万円を使って将来に向けた準備をすることです。
すぐにお金を増やす投資を始めたいところですが、まずは生活防衛資金を準備(貯金)するところからです。

目安として6ヶ月分の生活防衛資金を準備します。
毎月13.3万円必要なので、6ヶ月分で79.8万円が必要です。
毎月3.7万円ずつ貯金することになるので、1年10ヶ月間(22ヶ月)間貯金が必要です。
当然この間に仕事を再開できて、より多くの収入が得られていれば生活防衛資金を準備するスピードは早くなります。
生活防衛資金が準備できたら、投資を始めましょう。
まずは、つみたてNISAの非課税枠を使って投資をし、それ以上に余るようであれば特定口座で米国ETFのVTIを購入していき、長期的に資産の最大化を目指すのをおすすめします。

次の仕事の準備をする
支出の見直しはすぐにできます。
仕事を辞めて支出の見直しが完了したら、次の仕事の準備をしましょう。
報道された33歳で手取り23万円の男性の場合、自動販売機の設置・運営会社で商品の補充や詰替えをする仕事をしていましたが、可能であればより需要のあるスキルを身につけて再就職した方が、楽に同じ金額を稼ぐことが可能です。
今需要のあるスキルは、たとえばプログラミングや動画編集が挙げられます。
プログラミングは本当に人手不足なので、プログラミングスキルがあれば重宝されます。

厚生労働省が公表している「賃金構造基本統計調査」を元にプログラマーの平均年収を算出しているサイトによると、平均月収は30万円程度となっており、退職前の額面月収とあまり変わらないことが分かります。
一方で月間の労働時間は大幅に改善されそうです。
重要なことは、世の中に需要のあるスキルを身につけて再就職することであって、必ずプログラミンングのスキルを身につけなければいけないわけではありません。
ただ、退職した時点で何もスキルが無い状態であれば、傷病手当金や失業給付金を受給しながらプログラミングスキルを学ぶことをおすすめします。
結果どうなるか
会社を辞め、傷病手当金や失業給付金を受給し、固定費を見直し、貯金や投資を始め、次の仕事の準備をした結果どうなるか。
完全にシミュレーションですが、どのような未来が想定されるか考えてみます。
- 33歳で退職(12月に退職し、1月から給付金を受給)
- 傷病手当金、失業給付金として毎月17万円を1年10ヶ月間受給
- 1年10ヶ月間で生活防衛資金を準備
- 生活防衛資金を貯める1年10ヶ月間でプログラミングスキルを身につける
- 1年11ヶ月目に再就職し、160時間で手取り23万円を達成
- 1年11ヶ月目以降でつみたてNISA(楽天VTI)+米国ETF(VTI)開始
- 年利3%を想定
退職1年目:生活防衛資金が半分貯まる

300時間労働から逃れて傷病手当金での生活を開始します。
固定費を見直して毎月の支出を13.3万円に抑えた生活です。
結果、毎月3.7万円を捻出できるので全額貯金にまわして生活防衛資金を準備します。
1年が経過する頃には3.7万円の12ヶ月分で44.4万円貯まります。
退職2年目:生活防衛資金が貯まり、投資を始める

退職して1年10ヶ月後には、生活防衛資金(毎月の支出額の6ヶ月分)が無事貯まり、それ以降は毎月捻出できたお金を全額投資に回していきます。
投資は、まずつみたてNISAの枠をしっかりと活用していきます。
投資先はS&P500に連動している優良なインデックス投資である楽天VTIがおすすめです。
なお、つみたてNISAは年間の投資上限が決まっており、40万円です。
毎月12ヶ月に渡って投資していくのであれば毎月に投資できる額は3.3万円ですが、今回の場合、10ヶ月間はつみたてNISAの枠を使用していない状態なので、2ヶ月間は全ての投資資金をつみたてNISAにあてます。

退職して2年が経過する頃には、スキルを身につけて再就職し、今までよりも圧倒的に少ない時間で同等の給料を手に入れます。
そして、100万円以上の資産を手に入れている状態を達成します。
退職3年目:再就職し安定して稼ぎ始める

退職後3年目には、つみたてNISAの積立額を3.3万円にし、残りの投資資金を米国ETFのS&P500に連動した好成績のVTIを買っていくことで資産の最大化を目指します。

退職して3年が経過する頃には、投資した資産が100万円を超えており、生活防衛資金も合わせた資産全体で200万円を超えてきます。
退職5年目:460万円以上の資産を達成

退職して5年後には、3%の利回りで運用した結果、資産全体で460万円を達成します。
この時点で38歳ですが、毎月13.3万円の生活をしている人が、ここまでの資産を築くことができれば、もう仕事をクビになってもすぐに焦ることは無いでしょう。
退職10年目:投資資産1000万円達成

退職して10年が経過する頃、投資している資産だけでついに1000万円を超えます。
この時点で43歳。まだ43歳です。
ここまでお金を増やすことができれば、多少想定外のことが起こっても落ち着いて対処できるでしょう。
一刻も早く仕事から離れて生活を立て直そう
ここまで詳細に解説してきましたが、あくまで前提を置いた単純なシミュレーションです。
9.7万円を投資に回して13.3万円の生活を10年間続けるというのは、少し非現実的だったかもしれません。
一方で、需要のあるプログラミングスキルを身につけて仕事をしていても10年間手取りがずっと23万円かというと、それも違うと思います。ある程度の昇給も期待できるでしょう。
前提を細かく設定し出すとキリがありません。
ただし、「定年(65歳)までに2000万円貯める」といった場合はどうでしょうか。

32年間、年利3%を前提に2000万円貯めることを考えると、毎月3.1万円程度の積み立てで済みます。
毎月の余裕資金9.7万円から考えると、6.5万円以上も余ります。
毎月6.5万円も余れば、少し贅沢をしてみたり旅行をしてみたり、人生を豊かにすることが可能です。
これは事実でしょう。
どのようにいくらお金を増やしていくにしても、やはり最初の一歩が肝心です。
300時間労働で手取り23万円でも、ここまで人生を変えることは可能なので、一刻も早く置かれた状況のまずさに気づき、生活を立て直すための行動を起こすことが何より重要なのです。