この記事では、サラリーマンが副業をするなら絶対にやっておくべき開業届と青色申告承認申請書提出のメリットと具体的な手続き方法についてご紹介します。
サラリーマンが開業届や青色申告承認申請をすると会社にバレるんじゃないかとか、手続きが面倒なんじゃないかとか不安な点がありますよね。
先に結論を伝えると、開業届と青色申告承認申請書を提出しても会社にバレませんし、手続きも非常に簡単です。
たったこれだけのことをすることで、税金面で非常に大きなメリットを得られます。
副業を始めたあなたもぜひ、開業届と青色申告承認申請書をすぐに提出して、税金面でお得を取りましょう。
目次
開業届と青色申告承認申請書とは
まずはじめに、開業届と青色申告承認申請書について解説します。
開業届とは
開業届は、あなたが個人事業を開業したことを税務署に申告することです。
ブログやアフィリエイトなどの副業も立派な事業なので、開業届を出すことは可能です。
税務署に開業を申告するための書類のことを「個人事業の開廃業届出書」と言います。これが通称「開業届」です。
開業届を税務署に提出することで、あなたは個人事業主として開業したことになり、個人事業主の税金に関する案内が税務署から届くようになります。
開業届の提出は、次に説明する青色申告をするための必要な手続きです。
青色申告承認申請とは
青色申告承認申請は、確定申告をするさいに青色申告で確定申告をすることを税務署に許可してもらうための申請です。
サラリーマンが納税する場合、あなたに代わって会社が源泉徴収という形で給料から差し引いて納税していますが、個人事業主の場合は自分で確定申告という形で税務署に納税しなければなりません。
自分で確定申告をするとき、申告の種類が2種類あります。
白色申告と青色申告です。
簡単に言ってしまうと、白色申告は確定申告のための書類準備が簡単な反面、受けられる税金のメリットが小さいです。
それに対して青色申告は、帳簿を作成して確定申告のさいに申告書とあわせて提出しなければならないなど、書類の準備が白色申告に比べて大変ですが、その分受けられる税金のメリットが大きいのです。
青色申告は、大変といっても会計ソフトを使うなどで確定申告の負担を軽くすることができるので、得られる税金のメリットを考えると、確定申告はできるだけ青色申告にすることをオススメします。
青色申告は誰でもできるわけではなく、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出することで、はじめてできるようになります。
開業届と青色申告承認申請書を提出するメリット
開業届と青色申告承認申請書を提出することで、確定申告のさいに青色申告をするができます。
サラリーマンでも経費を使えるようになるという点は、白色申告でも変わらないのですが、青色申告だからこそ得られるメリットは5つあります。
- 青色申告特別控除による65万円の節税効果を受けられる
- 赤字を3年間繰り越して所得税を節税できる
- 家族への給料が経費になる
- 30万円未満の固定資産を一括経費計上できる
- 副業でも事業所得にできる場合がある
1つずつ説明します。
青色申告特別控除による65万円の節税効果を受けられる
青色申告にする最大のメリットが青色申告特別控除です。
青色申告をするだけで10万円か65万円の控除を受けられます。
10万円と65万円の違いは、確定申告のさいに提出する帳簿の種類です。
帳簿のつけ方 | 控除額 |
簡易簿記 | 10万円 |
複式簿記 | 65万円 |
簡易簿記というのは、家計簿のようなものをイメージしていただければ良いです。
一方で複式簿記は、取引を貸方借方に分けて記録していき、貸借対照表と損益計算書を作るイメージです。
複式簿記は、一見ハードルが高いようにも感じますが、Webの会計ソフトを使えば比較的簡単に作成できますので、複式簿記で記録するようにしてぜひ65万円の控除を受けられるように準備しましょう。
赤字を3年間繰り越して所得税を節税できる
青色申告にするメリット2点目は、将来黒字になった時にかかる所得税を安くできることです。
所得税というのは、課税所得に対してかかります。
そのため個人事業主は、課税所得をいかに下げられないかを考えるのですが、その年にかかった費用や損失よりも収入の方が大きければ税金がかかってしまいます。
ですが、青色申告にしていれば、過去3年間で赤字だった年の赤字額を使って課税所得を下げることができるのです。
これを「純損失の繰越控除」と言います。つまり、ある年の事業活動の結果が赤字になってしまったと場合、将来3年に渡って収益が出た年に損失として計上することができます。
副業でブログなどの事業を始めてもすぐに成果が出るわけではないので、最初の頃は赤字決算になりがちです。
ですが、そこで発生した赤字(損失)分は、翌年以降(3年後以内)で黒字だった年に損失として計上することで、黒字分を相殺して課税所得を減らすことができるのです。
家族への給料が経費になる
3点目のメリットは、配偶者が家族に給料を支払えることです。
たとえば、配偶者が専業主婦であなたの副業の手伝いをしてくれている場合、配偶者に給料(青色事業専従者給与)という形で支払うことができます。
支払った給料は経費扱いになるので、ここでも節税メリットを受けられるのです。
30万円未満の固定資産を一括経費計上できる
4点目のメリットは、減価償却の特例を受けられて30万円未満の固定資産を一括経費計上できることです。
青色申告をしない場合、仕事で使う備品であっても10万円以上の物は減価償却が必要になり、決められた耐用年数にしたがって減価償却していきます。
ですが、青色申告であれば、30万円までの物は一括で経費計上できるので、それだけ節税になるのです。
たとえば28万円のパソコンを購入した場合、パソコンの耐用年数は4年のため、1年で7万円分の減価償却をすることになります。
一方で青色申告の場合、28万円分を一括で経費にできるので、通常よりも21万円(28万円 – 7万円)も多く節税できるのです。
副業でも事業所得にできる場合がある
5点目のメリットは、副業であっても雑所得ではなく、事業所得にできる場合があることです。
事業所得の良いところは、給与所得との損益通算ができることです。
サラリーマンとして年間で500万円の課税所得がある場合、500万円に対して税金がかかりますが、事業所得と認められる副業で100万円の赤字を出した場合には、給与との損益通算をすることができ400万円に対して税金がかかることになるのです。
また、所得が下がるので所得税率も下がることがあります。
ただし、必ず事業所得にできるわけではありません。
一定の規模で継続して事業を営まれているかなど、明文化されてはいませんが事業規模と認められる水準があります。
事業所得と認められない場合は、雑所得という扱いになり、サラリーマンの給与収入との損益通算はできません。
雑所得の場合は、サラリーマンの給与収入に対してかかる所得税率と同じ税率がかけられます。
開業届と青色申告承認申請書を提出するデメリット(会社にバレないのか)
開業届を提出すると失業保険が受けられなくなる
開業届を出すことのデメリットは、失業保険を受けられなくなる可能性が高いことです。
サラリーマンが会社を何らかの理由で辞めた時には失業給付金を受けられます。
これは、生活の不安なく安心して次の職を探せるようにするための制度ですので、サラリーマンを辞めても「開業届を提出している=失業状態ではない」と解釈されて、失業保険を受けられなくなる可能性が高まるので注意が必要です。
副業が会社にバレる仕組み
あなたの副業が会社にバレるのは、副業収入も合わせた所得に対する住民税が自治体から会社に通知されるからです。
副業がバレるまでのステップはこうです。
- 会社が従業員の年収情報を、税務署と従業員が住んでいる自治体に報告
- 税務署が自治体に確定申告の情報を報告
- ①②を合わせて自治体が住民一人一人の住民税を計算
- 自治体が計算した住民税の納付書を会社に送付
- 会社が受領した納付書の金額に違和感を抱き副業が発覚
この流れで副業をしていることが会社にバレるだけなので、開業届や青色申告承認申請書を提出したからといって、副業していることが会社にバレるということはありません。
自治体が計算した住民税の納付書を会社に送付する時に、副業分の住民税の納付書を分けて自宅に送ってもらうことが可能です。
これは確定申告の時にそのように申告することができるので、必ず副業分の所得に対する住民税の納付書は分けるようにしましょう。
ただし、自治体が副業分も合算した住民税の納付書を会社に送ってしまうというミスがゼロではありませんので、最終的には自己責任のもとで副業をするようにしてください。
青色申告承認申請書を出しても青色申告を強制されることはない
青色申告承認申請書を提出したからといって、青色申告が強制されることはありません。
あくまで「青色申告をしてもいいですよ」という承諾を税務署からいただいただけなので、自分の意思で「やっぱり白色申告にする」ということは可能なのです。
逆に青色申告承認申請書を提出しておかなければ、青色申告をすることはできません。
リスクは何も無いので、とりあえず青色申告承認申請書を出しておくといった気持ちで手続きしておくことをおすすめします。
開業届と青色申告承認申請書の書き方
開業届の書き方
開業届のフォーマットは国税庁のホームページに掲載されています。
「個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)」のリンクをクリックして表示されるPDFファイルをダウンロードしましょう。
◆①提出先
納税地を所轄する税務署を記入します。
◆②提出日
開業届を税務署に提出する日を記入します。
◆③納税地
納税地は原則的に住民票がある場所を記入します。住民票がある場所と現在住んでいる場所(居所地)が異なる場合は現在住んでいる場所で納税することも可能です。電話番号は固定電話でなく携帯電話でも問題ありません。
◆④上記以外の住所地・事業所等
住んでいる場所と事業所や事務所などが2か所以上がる場合は記載してください。住んでいる場所のみであれば空欄で良いです。
◆⑤氏名
あなたの氏名を記入します。押印を忘れないようにしてください。
◆⑥生年月日
あなたの生年月日を記入します。
◆⑦個人番号
あなたのマイナンバーを記入します。
◆⑧職業
基本的に自由記述です。何の仕事か分かれば良いです。
◆⑨屋号
店舗を営業する事業主などは屋号を記入します。必須項目ではないので屋号が無い場合は空欄で良いです。
◆⑩届出の区分
「開業」にチェックを入れます。他は空欄で良いです。
◆⑪所得の種類
「事業(農業)所得」にチェックを入れます。
◆⑫開業・廃業日等
開業を認識した日を記入します。特にルールはないので開業したと思った日を自分で決めて記入してください。
◆⑬事業所等を新増設、移転、廃止した場合
空欄で良いです。
◆⑭廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
空欄で良いです。
◆⑮「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」
青色申告承認申請書を一緒に提出するので、「有」にチェックを入れます。
◆⑯消費税に関する「課税事業者選択届出書」又は「事業廃止届出書」
個人事業主の開業当初は免税事業者になるので、「無」にチェックを入れます。
◆⑰事業の概要
副業の内容を具体的に記入してください。
◆⑱給与等の支払の状況
従業員を雇う予定の場合は人数や月給、ボーナスなどを記載します。ここに記載して配偶者や親族を従業員(専従者)にすることで青色事業専従者給与を経費として計上することができます。
「給与の定め方」は時給、日給、月給等を記載します。
「税額の有無」は源泉徴収をする人は「有」、そうでない人は「無」となります。給与を支払うと基本的に源泉徴収することになりますので「有」を記入します。
◆⑲その他参考事項
給与関連について特記することがあれば記入します。基本的に空欄で良いです。
◆⑳源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無
従業員を雇う予定で源泉徴収を納付する義務がある場合、納期の特例の承認に関する申請書を提出すると、毎月納付しないといけないところを半期に一度にまとめることができます。
◆㉑給与支払いを開始する年月日
給与支払いをする場合、開始日を記入します。
開業届の2枚目は控えになっていて、1枚目を記入することで自動的に反映されます。
個人番号(マイナンバー)のみ、控えにはもともと記入欄が設けられていません。
青色申告承認申請書の書き方
次に青色申告承認申請書の書き方を解説します。
青色申告承認申請書も国税庁のホームページに掲載されています。
「所得税の青色申告承認申請書」のリンクをクリックして表示されるPDFファイルをダウンロードしましょう。
◆①提出先
納税地を所轄する税務署を記入します。
◆②提出日
青色申告承認申請書を税務署に提出する日を記入します。
◆③納税地
納税地は原則的に住民票がある場所を記入します。住民票がある場所と現在住んでいる場所(居所地)が異なる場合は現在住んでいる場所で納税することも可能です。電話番号は固定電話でなく携帯電話でも問題ありません。
◆④上記以外の住所地・事業所等
住んでいる場所と事業所や事務所などが2か所以上がる場合は記載してください。住んでいる場所のみであれば空欄で良いです。
◆⑤氏名
あなたの氏名を記入します。押印を忘れないようにしてください。
◆⑥生年月日
あなたの生年月日を記入します。
◆⑦職業
基本的に自由記述です。何の仕事か分かれば良いです。
◆⑧屋号
店舗を営業する事業主などは屋号を記入します。必須項目ではないので屋号が無い場合は空欄で良いです。
「令和◯年分以後の〜」という部分は、青色申告を始めたい年を記入します。基本的には青色申告承認申請書を記入している年になるかと思います。
◆⑨事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地
事務所と屋号を記入します。無い場合は空欄で良いです。
◆⑩所得の種類
「事業所得」にチェックを入れます。
◆⑪いままでに青色申告承認の取消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無
今回が初めてとなるので「無」にチェックを入れます。
◆⑫本年1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日
開業日を記入します。
◆⑬相続による事業継承の有無
事業継承出ない場合は「無」にチェックを入れます。
◆⑭その他参考事項
「簿記方式」は、65万円の青色申告特別控除を受けるために「複式簿記」にチェックを入れましょう。
「備付帳簿名」は、「総勘定元帳」、「仕訳帳」にチェックを入れましょう。この2つは青色申告特別控除を受けるために必要な補助簿となります。
開業届と青色申告承認申請書の提出方法
開業届と青色申告承認申請書の準備ができたら、納税地を管轄する税務署に行って提出しましょう。
書類は印刷して税務署に持っていきますが、開業届は2ページ目の控えも一緒に印刷して持って行ってください。
また、青色申告承認申請書は1ページ目の申請書を2枚印刷して持って行ってください。
開業届も青色申告承認申請書も税務署で提出すると、受領したことを証明する押印を控え書類にしてもらいます。
税務署から書類を受領したことを通知するハガキなどは送られてこないので、控え用紙を自分で持参して押印してもらいましょう。
開業届と青色申告承認申請書の提出期限
開業届の提出期限は、新たに事業を開始した日から1か月以内と決まっています。
ただし、事業開始の定義は明確にあるわけではないので正直いつでも問題ありません。
1日でないといけないというルールもないので実際に提出する日付でも良いです。
青色申告承認申請書の提出期限は、開業した日付によって異なります。
- 1月1日~1月15日までに開業した場合 → その年の3月15日までが提出期限
- 1月16日以降に開業した場合 → 開業日から2ヶ月以内が提出期限
開業届と青色申告承認申請書を提出して節税メリットを受けよう
青色申告をすれば、65万円の青色申告特別控除をはじめとした様々な節税メリットを受けることができます。
そのためには開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出する必要がありますが、思い立ったらその日のうちにでも完了できるくらい簡単な手続きです。
会社に副業がバレることにもならないので、副業しようと思ったらすぐに開業届と青色申告承認申請書を提出して大きな節税メリットを受けられるように手続きしましょう。